御守りみたいな曲がイヤホンから流れてくる
僕は帰りの電車を乗り過ごしているところだった
すっかり日が暮れた勝手のわからない駅のホームで、虫みたいにゴミが浮遊する
やたらと、落ち着いた空気が、
ある種の居心地の悪さを作り上げていた
蛍光灯が近くて、そしてやたらと強くて
やっと来た車両は夜の上り列車だから
座席を二つも三つも占領する人が多い
酒を呑む人、布団のように眠る人、
大きな声で電話する人
それらがなんとなく許されている空間で、
僕は膝をぺっとりくっつけて小さく座った
野蛮だ、そう思った
来た道を戻る形で僕の駅を待つ
今度は逃さないように、穴が開くほど
電光掲示板を見つめて
ドアが開くと冷えた空気の代わりに
温い風が差し込んだ
クレヨンのような甘い匂いがした