殺意と炎天下の純情

吐いて捨てるほどの

海豚の夢

 

渋谷のお気に入りの喫茶店が無くなったことが

途端に、胸が苦しくなるほど悲しくなった

もう3年も前のことだった

あの時抱えた感情にやっと

身体が追いついたのかもしれない

 

僕たちには、失われていくひとつずつを

失うことそれだけをひとつひとつ確かめて

すり抜けていくことを見守ることしかできない

 

そこには僕たちの手に負えない

絶対的な何かの力が働いていて

それは多分、潮の満ち引きの様な

 

「気づいた時にはもう遅く」て、

その時には既に、その幾つも前の段落で

始まっていたこと、もう無くしていたこと

もしくは初めから、プロローグから

イントロから、序章から

既にそれは決まっていたこと

失うことが予め決められた始まりを

実はなんとなく僕は知っていて、

だから、断絶に冷たいのかもしれない

人も、物も、風も同じだった

 

選ばなかった選択肢を下書き保存したまま

後悔するわけでもなく、たまに眺めている

プログラムされた僕たちじゃないから

間違える事を諦めるより他にないのだ