殺意と炎天下の純情

吐いて捨てるほどの

 

 

忘れられない人がいる というのは悪いことではないのだろう 良いものでも、悪いものでも

それがたとえもう他の場所に行っていたとしても、それが海でもこの世でも この世でなくても 

 

カーテンを閉めて 開演を謳ってみる

誰かいるならそれでよかった そんなことはなかった 

 

死んでいなくても、誰かにとってはもう死んだ人間として 生きているひとがいる わたしもきっとそうだ 

 

さて あなたの脳に一本ずつ刻まれた直線を

それに沿って切り開くことが可能 

 

削れた爪は薄くひらりとしている

缶に挿したストローを粉々になるまで噛んだ 

 

赤いストロー 口紅が目立たないように

 

血の色をしたリップがたまに指に付くと すごくテラテラと光ったりする 血だ 

血色の悪い肌を埋めるための血だ 

 

無理するほどではないが、無理をしないで息をすることはなかなかに難しい 頭のネジが香水の染み込んだ枕に沈む 

 

雨が降る 傘が壊れたから、濡れてみるのも悪くはなかった 11歳の頃 帰り道に全部邪魔になって、水溜りをぶち壊すみたいに歩いたことがふと浮かんだ

 

過去は反芻される それはもう抗いようのないルールである 

良かったことは、何一つとして今の私に何か与えてはくれない 良かった記憶さえ総じて負となって今に襲いかかる 

あの子は元気かな あの子は元気かな あの子は元気かな 

みんな嫌いになった 全部みんなが悪くて、そして全部私が悪い 

 

息苦しくて仕方ない 何を言っても返される 何をしても、返される 

 

そういうものだと諦めて、諦めて尚 そういうものだと許せない 許せないながらに、大して興味もなかった

 

 

 

どこにもいないのだろう 隅から隅まで真っ白な夢を見た